企業情報

OEMから自社製品を持つ強力メーカーへ 海外進出を実現

会社名 株式会社田中電気研究所 
ホームページ メンテナンスフリーの高性能ダスト濃度計で海外進出-「株式会社田中電気研究所」 
住所 〒156-0052 東京都世田谷区経堂3-30-10 
電話番号 03-3425-2381 
代表者名 田中 敏文 
代表者の座右の銘 「先ず隗(かい)より始めよ」
*自分で決めて自分の足ではじめよう、という意味です。
「速やかなるを欲するなかれ」
*下請けを脱していきなり自社製品を持つことは不可能。15年というスパンで事業を見てきた成果だと言えます。 
設立 1963年12月17日 
従業員数 30名 
事業内容 *環境関連事業
*OEM事業
*PCB事業 
今後の事業展開
ビジョン
◆当社の強みである"熊手方式"の経営方法を世界で展開していきたいと考えています。 
取引希望企業 ■国内外の工場でダスト濃度計を導入したいメーカー・プラントさま 

代表取締役社長 田中 敏文 

エージェントレポート
経堂の駅から徒歩20分、静かな住宅街の中に田中電気研究所さまはあります。自社で強力な商品を持つメーカーへと事業フェーズを変えることはなかなか難しいこと。それを15年の長きに渡る事業計画で実現されたこと、日本の中小企業の見本になるのではと思いました。

(取材者:石川 香苗子) 

経営者インタビュー

JETROでのセミナーでも注目されている貴社、今主力の事業をお教えください。
メンテナンスのいらないダスト濃度計を国内外で販売していることです。
世界的に工場やプラントから出る「ばい煙」が公害として問題視されています。
そのばい煙を計測するダスト濃度計を自社製品として開発しました。
コンセプトは「お客さまが自分でメンテナンスできる製品を作る」。
ハロゲンランプなどの消耗品に関して、
取り扱い説明書に市場で売っているメーカー名や品番を明記した。
そして、個人で買えるような部品をあえて使った。
これは自社でプリント基板部分から製造してきた歴史があるから実現したこと。
ですから15〜20年はメンテナンス依頼が来ることはありません。
一見、当社へのメンテナンス依頼が減るように感じますがそうではなく、
現場にとって使いやすい機械にすることを第一目標においたからなのです。

今回、JETROの協力もあってベトナムとタイでの販売代理契約も締結。
世界での導入が進みつつあります。その際「海外専用機種」を開発したことも特徴。
日本国内で販売する自社製品よりも安価な部品を使って30〜40%価格ダウン。
新興国にあわせた価格帯を実現させ、海外向け機種は日本で販売していません。
自社製品同士が国内で競合してしまうことを避けるためです。
海外進出を実現するまでの道のりを教えてください。
JETROの「輸出有望案件発掘支援事業」に認定されたことが大きかったですね。
大手商社出身の"専門家"が当社専属でついてくださり、
現地の地勢、政治、法律、マーケットなどすべて調査してくださいます。
さらに、現地で当社が取引すべき代理店の開拓、ベトナム政府、現地J-POWER、日本商社
などへのアポ取りから、アポイントで話す内容まですべて考えてくださる。
もちろん通訳も、英語の契約書など書類まわりもすべて整え、
当社がどのように海外へ強みを打ち出していったらいいのか
全面的にバックアップしてくださるのです。

これは心強い武器となりました。
もともと海外進出を狙っていたのですか?
そういうわけではありません。
売り上げの30〜40%を占めるまで自社製品シェアが高まったことが大きい。
私は3代目。もとは祖父がプリント基板設計や弱電波を測る電子測定器、放射能測定器を
大手メーカーから発注を請けて作っていたところから始まります。現在でもその事業は
続いています。

私が学生自体をすごした1970年代は公害問題が社会現象になっていた頃。
就職して全国各地のプラントで電子計装調整技術員として機器の自動制御に関わります。
自分が継ぐ会社のお客さま現場を見てきたことになります。その中で8ヶ月間タイ・バンコクのプラントに
デスクを置いてもらい、現地の技術者に教育・指導をする経験ができました。
そのような経験から、プラント現場に直結した環境に役立つ機器を作りたい、
自社製品を海外で勝負してみたいという気持ちを強くもつように。

だからと言って会社を継いで突然90度変更することはせず、そのまま後を継ぎました。
だって30人の社員は先代が丹精こめて育てた大切な人材。
突然方針転換したら困ってしまいますよね。
「速やかなるを欲するなかれ」で、じっくりと方向転換をすすめました。
自社で強力な製品を持つメーカーへステップUPできたヒケツはなんですか?
メーカーへと方向転換すべくアンテナを常に張っていたこと、
間口を広くし様々な仕事を請けていたこと、そして利益を独り占めしなかったことだと思います。
きっと、断ろうと思えば断れる仕事もあったと思います。ですが、あえて極力引き受けた。
もしくは自社で難しければ引き受けていただける業者を探した。
新しい展示会に出向いたり、海外に行くチャンスを得るため外の世界を見続けた。これを15年コツコツ続けたわけです。
私は"熊手方式"と呼んでいますが、大手メーカーなどお客様と直取引せずあえて商社を挟む。
そうすると、当社の利幅は一見薄くなりますが、自社製品を全国ネットで広げることができるのです。
だから、お客さまから直接「ダスト濃度計を売ってください」という依頼があると、
こちらから商社に電話して「間に入ってもらえませんか?」と話を持っていく。
商社にしてみればいいお客さんですよね(笑)。そして別の地域で似たような要望があれば
仕事をもらう。
商社も潤い、お客さんも喜び、私たちも全国ネットで商品が広まって嬉しい。喜ぶ人が
増えるんです。

1980年代の日米貿易摩擦やパパ・ブッシュの時代など
日本経済の歴史を紐解けばわかりますが、独り勝ちでうまくいくわけがありません。
「止息(しそく)の戒め」という老子の言葉があるように、
少しでもうぬぼれた気持ちがあると痛い目にあいます。
ひとつひとつの仕事を誠実に引き受け、人脈を大切にし
急がずあせらず、地道にメーカーになるために努力する、その賜物だと考えます。
日本の中小企業が海外に進出するにはどうしたらいいと思いますか?
自社の製品に対する熱意とマメさに尽きます。言語も景気も企業規模も関係ない。

英語ができないから萎縮してしまう経営者の方が多いようですが、言葉じゃないんです。
現地に行くとわかりますが、彼らも人間ですから熱意は伝わります。それが大切。
そして、すばやいレスポンス。アジア諸国は変動が激しいですから、
出張へ出かけていて2日メールをしないでいると、催促のメールが来る。
時差も計算して先方の始業に間に合うように即レスポンスする。
ベトナム出張した時も、求められていないのに毎回10ページ以上の出張報告書を作って
JETROと中小企業支援機構に提出する。
そういった日本人特有の真面目さ、マメさは世界で充分に通用するんです。
現地はいい加減なことも多いですが、それでも、すべてマメに対応することが重要です。

そして、契約書や税関、貿易関連の専門知識は専門家の力を借りましょう。
法律面や英語での書面のひながたは最も中小企業にノウハウがない。
私の場合そこの課題をJETROからサポートしてもらえたおかげでブレイクスルーできました。

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